今回の記事は主に医療職向けの内容ですが、社会人で大学院、研究に興味を持つ方にも有益な内容と思います。
- 臨床現場で働いているけど研究をやると何かいいことありますか?
- なんとなく研究に興味はあるけどイメージが湧かない
- 研究を始める方法がわからない、手順を知りたい
こういった疑問に答えます。
僕はこんな感じの者です。
・大学院5年目(博士後期課程)
・学会発表5回、論文も数本投稿できています
・研究を行ってみて、職業選択の幅が広がった実感があります
■1 働きつつ研究するメリット・デメリットをお伝えします。
リハビリ職で日々働いているといろいろな疑問が出てきます。
そういった疑問を解明していく取り組みが研究なのですけど実際にやっている人って限られていますよね。実際に自分の職場でも周りに研究活動をやる人はいませんでした。
結局のところ、研究活動は行った方が良いのでしょうか?
メリット・デメリットをまとめてみました。
メリット① 他者との差別化
職場内で他の人と差をつけることができ、目立つ存在になれます。
なぜなら多くの人が3年もすればほとんど勉強しなくなります。例えば、あなたが研究計画を立案でき、統計ソフトを1種類でも使えるとします。そのような人材はあなたの職場に何人いますでしょうか??
研究できたって給料上がるわけじゃないでしょ?
確かに給料が即あがるものではないです。ただ、リハビリ職(医療職)でそのままずっと働いていても転職に活きるスキルは身につかないと思います。
多くの人がリハビリの治療技術を勉強しますが、その知識・技術は他業界には活かせませんし、キャリアアップにつながるかぶっちゃけ微妙です。
研究を始める、英語を学ぶ、マーケティングやプログラミングを学ぶ、どれもすぐに結果が出るものではないですが、何かやることが大切です。
結論、必ずしも研究でなくても良いが、職場や業界で希少性のある人材を目指すべき。
メリット② データの解析、取り扱い方を学ぶことができる。
データ解析、統計を扱うスキルは転職の可能性を広げます。主にビッグデータを取り扱えるデータ解析の知識は企業でも求められています。
医療職で働きつつも、Rやpython、SPSSを使うことができ、統計学の知識を勉強すれば、医療職以外でも仕事を探すことができます。
(追記:データ解析で本気で働くには更にデータベース、SQLなど慣れる必要がある。)
理系じゃないから大変そう、統計学なんてわからない。
僕も最初は同じでした。まずは数式とか難しいことはスルーして目の前の研究テーマをまとめる上で必要な統計方法を勉強していきましょう。それでまず1回統計ソフトを使ってみましょう。統計ソフトRは無料でダウンロード可能なツールです。1年程度続けると、慣れますよ。
(ちなみに有料のセミナーも出たことありますが、ネット検索して実践で慣れることで十分でした。)
メリット③ 通常業務のレベルアップにつながる
自分も就職して数年は治療技術の勉強に精を出していました。初年度くらいは良いかもですがその後は習った技術の汎用性の低さに気づくはずです。
「どのような患者さんに〇の技術を使い、どのような患者さんに×の技術を使うのか」というようなタイプ分け、特徴の抽出や、自分の行った治療結果をデータでまとめ解析する方がよっぽど汎用的で有益です。
このような論理的思考を最も効率よく鍛える方法は研究です。研究はデータから読み取れることを論理的に展開していく作業のため、研究を1つ通して行うことで医療職に必要な(しかし欠けていることも多い)論理的思考力が身につきます。
それはいうまでもなく目の前の患者さんにも還元されますし、職場で発表を行うことで職場全体がレベルアップし、更に多くの患者さんの満足度を高めることができます。
デメリット:多忙になる
デメリットはこれくらいですかね。身体には気をつけないといけないですが、正直お金もかからず失うものはないので、コスパ良い取り組みだと思います。
■2 研究やる気チェックリスト 5つ以上当てはまれば、やりましょう。
☑日頃から臨床業務で疑問を抱えている
☑今働いている業界で出世したい
☑尊敬できる同業者と知り合いたい
☑このまま働き続けることに不安がある
☑自分の治療を理論的に説明できるようになりたい
☑患者さんを良くする方法を学ぶより作り上げていきたい
☑大学院への進学を考えている
☑継続が得意だ
☑キャリアの幅を広げたい
このうち5つ以上あてはまったら、研究のやる気はある状態だと思います。
このブログでも初心者を支援する情報を上げていきます。是非始めてみましょう!!
■3 研究を始める最初のステップを説明します。
以下のステップに沿って進めます。
① 臨床疑問を立てる
② ①(臨床疑問)を検証する方法に実現可能性がある
③ 倫理的に問題がない
①臨床疑問を立てる
日々働いている中で感じる疑問が研究の原点(ネタ)になります。疑問は人によって違いますので、この段階ではいろいろと出してみることです。
例えば「〇〇術後の歩行練習で良くなる人と良くならない人の違いは何か?」という疑問を立ててみましょう。
次にその疑問に既に答えている先行文献や研究はないか確認します。日本語論文だとJSTAGE(https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja)でかなり調べられるはずです。この例の場合はキーワードに「〇〇術後、歩行」など入れてみることで関連論文が出てきます。
先行文献や研究で十分に疑問に答えられていない場合、あなたの立案した疑問はまだ解決されていないことを意味します。そうしたら、あなたの疑問を以下の②、③のステップで実現可能な研究計画か検討していきましょう。
② ①(臨床疑問)を検証する方法に実現可能性がある
研究の実現可能性を検討する上で、考えなければいけない点として、
・職場の協力、許可を得ること(上司、管理者にまず相談する)。
・患者さんに負担が生じないか、生じるとしてそれは許容されるものか。
・個人情報保護法に抵触しないか。
などがあります。
③倫理的に問題がない
病院に勤務している方で、研究安全倫理委員会がある場合は是非委員会の審査を通すことをお勧めします。
研究安全倫理委員会とは、研究計画の倫理性、安全性を第3者が評価してくれる(一番は患者さんに危害が及ぶ可能性のある計画ではないのかを見てくれます)仕組みで、論文化する場合はこのプロセスを経ていないと厳しいです。
職場に研究安全倫理委員会がない場合もあると思います。リハビリ業界ではhttp://jspt.japanpt.or.jp/shinsa/shinsa_procedure/のように協会が代理で行ってくれます。正し、規定の教育プログラムを受講する必要があるなど少し制限があります。
以上、研究をスタートする流れについて説明しましたが、詳しく説明されている文献を載せておきます。↓https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/44/4/44_44-4kikaku_Uchi_Masayuki/_pdf
以上、研究のモチベーションとその手続きについて記載しました。
今後も有益な記事を書いていきます。よろしくお願いします。